思い出の作品はたくさんあります。
これまで何度も作品展に出展させていただきましたが、そのたびに自分らしさを求めて、試行錯誤。
仕組みを考え、設計し、頭で描いたものが実際の形になる喜び、カルトナージュならではの醍醐味ですよね。
ただここでひとつ作品あげるとすればこの作品でしょうか・・・。
「すみれのトランク」この作品で、2011年ホビーラホビーレ手作り大賞の金賞をいただきました。
ホビーラホビーレでは、手作り大賞は毎年開かれていますが、その年によってテーマがあり、その年の大賞のテーマがカルトナージュでした。カルトナージュのコンテストなんてほとんど開催されないですし、他の方に作品を評価されて順番をつけられるなんてちょっと怖い(笑)ことですので最初は応募するつもりもありませんでした。
今振り返っても、なぜその気になったのかわからないのですが…。
出品しようと思いたったのは何かのご縁だったのですね。
このコンテストには、指定のカルトナージュキットを使うこと、布やリボンなどの資材も同店のものを使用するという条件がありました。
実はホビーラホビーレのキットを使うのは初めてでしたし、キット自体は、とてもシンプルな箱。
これをどう自分なりにアレンジしていくかキットを目の前にいろいろと考えました。
ふと私が思い付いたのは、箱のキットを2つ使ってトランク型を作れないかということでした。
いったんアイディアが浮かべば作業自体は早い私。
そのあとはパズルのようにキットをアレンジして夢中で作り上げました。
まさにトライ&エラー、何度もやり直しました。
すみれの紫とグリーンを組み合わせていったのですが、もともと目指していたフランス色が途中から和テイストになってしまったりと、色合わせに意外と苦心しました。
最初は写真だけの一次審査。
一次の審査通過のお知らせをいただき、実物を本社に送ったのが年明けだったと思います。
二次審査はどうなるのかなあ、なんてぼんやり思いながら過ごしていたころ、東日本大震災が起こったのです。
もちろん、コンテストのことは頭から消えて、カルトナージュ自体もやってはいけないのではないかと、自分の中の全ての価値観がどんどん変わっていった時期でした。
コンテストもなくなってしまうのかしらと思っていた頃、予定よりだいぶ遅れて、金賞をいただいたというお手紙をいただきました。
賞をいただくなんて、いったいいつ以来でしょうか?
授賞式はGW前に行われたホビーショーの会場。
受賞作品はガラスケースのなかに飾られていました。
会場には夫と娘と息子、そして両親までも来てくれました。
「カルトナージュ」を私が一生懸命やってきたことはもちろん知っていましたが、その世界のなかで私が評価していただけたということで、夫や両親にも少しは認めてもらえた気がしました。
まだ小学生だった子どもたちも「ママすごい!」と、家族に喜んでもらえたことが何より嬉しいことでした。
それまで私が習ってきたカルトナージュは、高価な布を使うエレガントなカルトナージュばかり。
そんな優雅な作品に憧れもありましたが自分のテイストはすこし違うという思いもずっと持ってきました。
この賞をいただいたことで、今の私のままでいいのかな、と小さな自信と勇気をもらえたそんな私の素敵な思い出の作品になったのです。
一歩踏み出すと、意外に素敵なことが待っているのですね。
皆さん機会があれば是非チャレンジを♪